簡単!使える!傾聴力を劇的に上げる3つのスキル+α
そんな悩みに答えます。
●傾聴の3つのスキル
●3つのスキル以上に大事なプラスα
この記事で紹介するポイントさえ押さえておけば、たちまち「きき上手」といわれるようになるでしょう。
今まで「難しい」と思ってた相手 ― メンバー、お客さま、子供… 等など、
あらゆる相手が心を開いてくれるようになるかも?!
こんにちは。よたろーです。
私は研修講師、キャリアコンサルタント、コーチ、等々を仕事にしていて、年間のべ1000人以上の方の支援をしています。
自分でいうのもなんですが、コミュニケーションのプロです。(照)
この記事では、私が実際に研修やキャリアコンサルティング等の場面で使っているスキルを紹介します。
詳しいプロフィールはこちらを御覧ください↓
傾聴はホントに大事?
傾聴するのは何のため?
「傾聴」ってそもそもなにか、ということについては別の記事で詳しく取りあげていますので、そちらを読んでください。→ 傾聴って難しい?3つの「きく」で「きき上手」になろう!
この記事から一部引用しながらごくごく簡単に「傾聴」とはなんだ、というのを押さえておきます。
まず「傾聴」の辞書的な意味は下のとおり。
【傾聴】気持ちを集中して話を熱心に聞くこと。「ーに値する話」
出典:学研現代新国語辞典 改訂第六版
そして上で紹介したこちらの記事(傾聴って難しい?3つの「きく」で「きき上手」になろう!)では下記のように補足しています。
漢字を見ても「傾ける」+「聴く」なので、耳を傾けて相手の話しをしっかりと聴くという意味だな、ということでわかりやすいのではないでしょうか。
もともとは心理カウンセリング療法で使われていた技法で、「積極的傾聴」と呼ばれることもあります。
聞かれたことありますでしょうか。最近の仕事現場でのコミュニケーションの流行りですと、「1on1(ワン・オン・ワン)」とか「心理的安全性」とかを耳にすることもあるかもしれません。
そしていずれの場合にも、この「傾聴」というスキルが大切になってきます。
こうやって見ると、「傾聴」ってなにやら大事そうに思えますが、ホントにそうでしょうか?
と聞かれると、
ていう答えが返ってきそうなんですけど…
では質問を変えて、
そんなに大事な傾聴、何のためにするんですか?
考えたことありますでしょうか。
ちょっとだけ考えてみてください。
おそらくこんなところですかね?
もちろん状況は人それぞれだと思いますけど。
- メンバー(部下・後輩)の本音が聞きたい
- メンバー(部下・後輩)に安心して働いてほしい
- メンバー(部下・後輩)にチャレンジしてほしい
- お客さまの本音が聴きたい
- お客さまの要望が知りたい
- 上司がなんで怒ってるのか知りたい
- 上司がなにを考えてるのか知りたい
ちょっと仕事にかたよってますが、仕事以外のシチュエーションだと、こんなこともあるでしょうか。
- 彼女/彼氏がなに考えてるか知りたい
- 彼女/彼氏/奥さん/旦那さん…がなんで不機嫌なのか知りたい
- 子供がなに考えてるか聞きたい
- 友達がなんで怒ってるのか知りたい
とかとか…、ありますかね?
すみません、私の想像力が乏しいのでこのあたりで。
どうでしょうか。
もしこういうことに役立つなら傾聴って大事だし、身につけたいな、と思えますかね?
理想の傾聴とは…
理想の傾聴?
「そんなのただ聞くだけでしょ。別に簡単なことじゃない」
と思われました?
それではちょっと長いんですが、下の文章を読んでみてもらっていいでしょうか。
とある小説からの引用です。
小さなモモにできたこと、それはほかでもありません、あいての話を聞くことでした。なあんだ、そんなこと、とみなさんは言うでしょうね。話を聞くなんて、だれにだってできるじゃないかって。
でもそれはまちがいです。ほんとうに聞くことのできる人は、めったにいないものです。そしてこのてんでモモは、それこそほかにはれいのないすばらしい才能をもっていたのです。
モモに話を聞いてもらっていると、ばかな人にもきゅうにまともな考えがうかんできます。モモがそういう考えをひきだすようなことを言ったり質問したりした、というわけではないのです。ただじっとすわって、注意ぶかく聞いているだけです。その大きな黒い目は、あいてをじっと見つめています。するとあいてには、じぶんのどこにそんなものがひそんでいたかとおどろくような考えが、すうっとうかびあがってくるのです。
モモに話を聞いてもらっていると、どうしてよいかわからずに思いまよっていた人は、きゅうにじぶんの意志がはっきりしてきます。ひっこみじあんの人には、きゅうに目のまえがひらけ、勇気が出てきます。不幸な人、なやみのある人には、希望とあかるさがわいてきます。たとえば、こう考えている人がいたとします。おれの人生は失敗で、なんの意味もない、おれはなん千万もの人間のなかのケチなひとりで、死んだところでこわれたつぼとおんなじだ、べつのつぼがすぐにおれの場所をふさぐだけさ、生きていようと死んでしまおうと、どうってちがいはありゃしない。この人がモモのところに出かけていって、その考えをうちあけたとします。するとしゃべっているうちに、ふしぎなことにじぶんがまちがっていたことがわかってくるのです。いや、おれはおれなんだ、世界じゅうの人間のなかで、おれという人間はひとりしかいない、だからおれはおれなりに、この世のなかでたいせつな者なんだ。
こういうふうにモモは人の話が聞けたのです!出典:『モモ』ミヒャエル・エンデ作 岩波少年文庫127 pp.23-24 より
ミヒャエル・エンデの『モモ』です。
子供向けの小説ですが、読んだことありますか?
それはさておき、読んでみていただいていかがでしょうか。
小説の中の架空の世界といってしまえばそれまでかもしれませんが、このモモの聞き方こそが理想的な傾聴だと思うんです。
現実の世界では、ホントにじっと聞いているだけでここまでのレベルにはたどり着かないかもしれません。
ただそのモモのやり方、といってもじっと聞いているだけですが、ではなくて、話しを聞いてもらった相手の状態に目を向けると、これこそが理想的な状態じゃありませんか。
考えがはっきりしたり、意志がはっきりしたり、勇気が出たり…
あなたはどのくらい傾聴できてますか?
あなたの「傾聴レベル」は?
いきなりレベル?なんて聞かれてもとまどいますね。
前項で紹介した「モモ」に比べたらどの程度の「聴く力」を持ってますか?
参考までに『「聞く能力」判定テスト』なんていうものがあるのでご紹介しておきます。
あくまで参考ですが、なんとなく自分の聞き方の特徴がつかめるんじゃないかと思います。
- 私は対話を行うたびに、聞く戦略について、意識的かつ具体的に考えている。
- ぼんやりしていて相手の話を聞いていないとよく言われる。
- 我慢できなくなって相手の話を先回りし、自分で結論を言ってしまうことがある。
- 話を聞くときはまっすぐ相手の目を見ている。
- 本当は聞いていないのに、聞いているような印象を与えるのが得意である。
- 思いやりがあって相手に共感できる聞き手だとよくほめられる。
- 相手の話に全面的な注意を向けられないときは、そのように相手に伝える。
- 「聞いていないでしょう!」とよく言われる。
- グループよりも一対一の状況のほうが、相手の話をよく聞くことができる。
- 会話の最中で、適切なときに意味をはっきりさせてくれるよう求める。
- 誰かが自分に話しているときは、たいていの場合注意して聞くよう努力している。
- 会話に参加するときと抜けだすときのタイミングを完全に心得ていて、何も聞き逃したことがない。
- 初対面の人の名前は必ず覚える。
- その話題でテストがあるとわかっているときにいちばん熱心に聞く。
- 興味があることを示すためにボディランゲージを使うよう意識して努力している。
- 相手が賛成できないことを言ったり、相手の話に付け加えたくなったりすると、そのことで頭がいっぱいになってしまい、注意して聞くことができなくなる。
出典:『質問7つの力』 ドロシー・リーズ著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
この一連の質問は「よたろーのブログ」内でもたびたび紹介している、私の愛読書でもある以下の『質問 7つの力』(私が持っているのは改題前の『その気にさせる質問力トレーニング』)に載っているものです。
この本は「質問力」つまり、「3つのきく*」のうちの「訊く」にあたるわけですが、同書の中に「Part7 第六の力 質問上手は聞き上手」という章があり、聞くことの重要性と難しさについて触れられています。(*「3つのきく」についてはこちらの記事を参照→傾聴って難しい?3つの「きく」で「きき上手」になろう!)
聞くことの難しさについては下記のように書かれています。
聞くことは、教えるのがもっとも難しいスキルのひとつである。
出典:『質問7つの力』 ドロシー・リーズ著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
原文を読んでおらず、またこれ以上の表記もないので真意はよくわかりませんが、個人的に思うのは「教える」ことが難しいのではなく「使えるようになる」「身につける」ことが難しい、そういうことなんじゃないかな、と思います。
「相手の身につかなければ教えたことにならない」というスタンスで語られているのであれば、まったく同意です。
つまりそれほど傾聴を身につけるのは難しいスキルなんです。
ですが同時にこんな風にも書かれています。
聞くことがスキルであるならば、学んで身につけることができるはずだ。実際、聞く技術を向上させる方法はたくさんある。
出典:『質問7つの力』 ドロシー・リーズ著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
そうなんです。
モモのレベルまで聞く力を向上させるのは並大抵のことではないかもしれません。
ですがスキルである以上必ず身につきますし、身につけるためのコツもあります。
ちなみにここまでご紹介してきた『質問 7つの力』はこちらです。
興味があればぜひ読んでみてください。
自信を持ってオススメします。
それではここから先は、傾聴力を高める具体的なコツ、つまりスキルについてみていきましょう。
傾聴の3つのスキル
「傾聴の3つのスキル」とは
ここからは傾聴のスキルについてご紹介していきます。
ひとつ確認しておきたいのですが、「スキル」ってよく使う言葉でしょうか?
なんか横文字だし、なんとなく使ってるだけかも、という感じがしなくもないので、いったん意味を押さえておきましょう。
スキル [身につけた]技能・技術。また、特殊技能。手腕。
出典:学研現代新国語辞典 改訂第六版
なるほど。
技能・技術と同じかと思ってましたが、ちょっと違うようですね。
[身についた]技能・技術である、と。ちょっと技能・技術も見ておきましょう。
【技能】物事を行う上での技術的な能力。うでまえ。「ーを生かす」
【技術】①科学知識を生産・加工に応用する方法・手段「先端ー」
②一定の方法によって、物事をうまく行うわざ。「編集のーを習う」出典:学研現代新国語辞典 改訂第六版
うーん、なるほどなるほど。
ちょっと厳密に追いかけていくとハマりそうなので簡単にまとめましょう。
技術は客観的に見た「わざ・方法」で技能はそのわざをつかう「能力」にも言及している、という感じですね。
先に示した「スキル」の定義「[身についた]技能・技術」と合わせて考えると、習得して使えるようになっているものをスキルと呼ぶ、そんな理解でよさそうでしょうか。
なんか余計な話ししてるな、と感じてるかもしれませんが、ここ大事!
「知ってる」「理解してる」だけではダメで、「身について使えるようになってないと意味がない」ということです。
なのでこれから簡単に使えるようになるための基本的なスキルを紹介していきます。
傾聴のスキル、「わざ」という点についてはたくさんあります。
ここではぜんぶ紹介しきれませんし、それだけで一冊の本、どころか世の中には何冊も何冊もあります。
なので今日ここではいちばん基礎的なスキルを3つだけ紹介します。
「基礎的」といいましたが、ちゃんと「身につけて」自分の持つスキルとして自由に使いこなせるようになれば、この3つだけでじゅうぶんです。
世の中変わります。
その3つとは、こちらです。
- 相づち
- くり返し
- 言いかえ
では一つひとつ見ていきましょう。
傾聴スキルその1.相づち
傾聴スキルのひとつ目は相づちです。あいづち。
「えー、そんなのできてるよ!バカにすんな!!」
って感じでしょうか。
【相槌・相鎚】[鍛冶(かじ)などで]相手とかわるがわる打ち合うつち。また、その相手。
ーを打つ《句》相手の話に調子を合わせて受け答えをしたり、うなずいたりする。
出典:学研現代新国語辞典 改訂第六版
これ面白いなと正直思っちゃいました。
私自身「あいづち」調べるの初めてでした。
「相づち」だけだと、もとの語意どおり「つち」(金づちとか木づちの「つち」ね)か、そのトンテントンテンやり合う相手を指すんですね。
そしてもちろんここで取りあげたいのは鍛冶の話しじゃなくて、「相づちを打つ」ほうです。
そのままですが、「相手の話に調子を合わせて」「受け答え」したり「うなずいたりする」と。
まず「相手の話」に「調子を合わせる」。
その上で「受け・答え」したり「うなずい」てみたりするということですね。
簡単なようで実はけっこう難しい相づち。
話しのプロであるフリーアナウンサーの魚住りえさんは、その著書の中でこんなふうに述べています。
「あいづちスキル」は魚住式「聞く力」の最終兵器
「聞くのが上手な人」と「そうでない人」の違いはいったい何でしょうか?
じつは、「あいづち」によるところが大きいと私は思います。
あいづちは本当に重要です。あいづちひとつで、相手が乗って話してくれたり、逆に話す気を失ってしまったりすることもあります。
(中略)
上手にあいづちを打って相手の話を聞き出しつつ、でもタイミングは相手の話に決してかぶってはいけません。あいづちの1回1回が勝負というぐらい、あいづちは重要な位置付けなのです。出典:『たった1分で会話が弾み、印象まで良くなる聞く力の教科書』 魚住りえ著 東洋経済新報社 p.82
「あいづちの1回1回が勝負」だなんて、かなり重要そうな感じがしますよね。
まったくそのとおりだなと私も思います。
相づちって要は、「あなたの話しをきいてますよ」「あなたの存在をちゃんと認めていますよ」というサインなんです。
だからこれがないということは・・・いうまでもないんじゃないかと。
いかがですか。
ふだんの自分の相づちって意識したことありますか?
どういう相づちが多いでしょうか?
そして何種類くらいの相づちを、意識的に使えていますか?
本当なら誰かとの会話を録音(理想的には録画)して聞いてみるのがいちばんなんですが、それができなければ自分のふだんの様子を思い出すか、または次回だれかと話す機会があったときに、自分の相づちに意識を向けてみてください。
その昔、学生時代にやりませんでした?
「授業中に先生の口癖を出した回数を数える」
そんな感じです。(笑)
どうでしょう、こんな傾向はありませんか?
- 単調。ワンパターン。 例)「うんうん」とか「なるほど」とか「えーえー」とかばっかり
- 「はい」の繰り返しが多い。「はいはい」「はいはいはい」「はいはいはいはい!」
「はい」は1回っていわれませんでした?(笑) - 食い気味。相手の話しが終わる前にかぶせてる。
- 相づち打ってない。反応が薄い。 例)「・・・」「ん(ボソッ)」「…んん」
まず自分の特徴をつかむことが先決です。
その上で身につけたい相づちのスキルは以下の3つ!
1.相づちは大きくはっきりと。相手にかぶせない。
上のほうでも書きましたが、あいづちは「あなたの話しをきいてますよ」「あなたの存在をちゃんと認めていますよ」というサインです。
だから相手の話しの区切り区切りを確かめて相づちを打ちます。
相手にかぶせちゃうのは向こうの時間を奪っていることになります。
そして語尾にかぶせていくと、向こうは急き立てられるような感じになってどんどん会話のペースが上がっていきます。
相手がそういうハイペースな人ならいいかもしれませんが、そうでない場合には無意識に、「なんかこの人と話すの合わないな」という印象を残しかねません。
2.自分なりにバリエーションのセットを持っておく。
営業の「さしすせそ」もしくは接客の「さしすせそ」って聞いたことありますか?
ちょっと調べただけなので出どころはすごく怪しいんですが、内容としてはうなずけるものなのと、相づちのバリエーションを増やすには良い練習になるのでご紹介します。
「さしすせそ」とは:
さ:さすがですね〜!
し:知らなかった!
す:すごーい!!
せ:センスありますね!
そ:そうなんですか!!?
こんな感じです(笑)
言い方とか状況はあなたのキャラと相手との関係性とかによって変わってくると思いますが、要は相手をのせて気持ちよく話してもらうための相づちです。
ここでお伝えしたいのは、この「さしすせそ」を覚えて使いこなしましょう、ということではありません。
もちろん使えそうならそのまま自分のものにしてみてもいいんですが、自分なりに工夫して作ってみてはどうですか?ということです。
別に「さしすせそ」じゃなくても、
あ:あー!あ、そうなんですね!
い:いいですね!
う:うれしい!うらやましい!
え:えーっ!!
お:おーっ!
とかでもいいんです。
自分なりに研究することでバリエーションを増やしてみてください。
「あ」行でも、「か」行でも、「は」行でも。
「はい」「うん」「んー」以外に、どのくらいバリエーションお持ちですか?
3.返事は「Yes」か「はい」。否定語を使わない。
「いや」とか「いいえ」とかクセになってませんか?
特にほめられたときとか、相手が自分のことを卑下して語ったときとか。
「いや、そんなことないです!」
「いいえ、ぜんぜん!!」
これ謙虚そうに見えますが、相手の気持ちを跳ね返していることになるので気をつけましょう。
例えばですが:
《パターン1》
相手:〇〇さん(あなた)っていつもおしゃれですよねぇ。
あなた:いやいや!そんなことないです!!
※ここはいったん「ありがとうございます」とかで受けてください。
《パターン2》
相手:私いつもドジばっかりでねぇ。
あなた:いやいや、ぜんぜんそんなことないじゃないですか!私だって…(以下自分の話へ、という最悪パターン)
※ここは「そうですね!」とは受けないでくださいね(笑)
ちょっと工夫しどころですが、「そんなふうに思ってらっしゃるんですね」とか「ドジ、ですか?」とか、いったん受けとめる工夫をしてみましょう。
他にもいろいろと手法という点ではありますが、まずはこの3つを意識してみてはいかがでしょうか。
傾聴スキルその2.くり返し
傾聴スキルのふたつ目は「くり返し」です。
そのままです。相手の言ったことをくり返すだけ。
いわゆるオウム返しです。
「そんなのムリ。覚えてられない」
そんな感じですかね。
なにも相手のいったことを一言一句くり返しましょう、というわけではないです。
相手がいったことの一部をくり返してあげるだけでいいんです。
実は先ほどの「相づち」のところでも出しましたが、例えば相手が自分自身のことを下げていったときとかですね。
《例》
相手:私、ホントグズでのろまな亀で…
あなた:グズでのろま、ですかぁ…
相手:そうなんですよ。この間なんて……
上の例だったら「亀?」というひとことでもいいかもしれません。
自分が記憶に残ったところ、印象に残ったところを素直にくり返してみてください。
また、これも相づちのところで出した例ですが、自分のことをほめられたときに、素直に受けとめるのは図々しくて照れくさい、という場合にも有効かもしれません。
《例》
相手:〇〇さんっていつも落ち着いてて素敵ですね!
あなた:落ち着いてる、ですか?
相手:えー、なんか余裕があって「大人」って感じで…
とかこんな感じです。
傾聴スキルその3.言いかえ
傾聴スキルの3つ目は「言いかえ」です。
ふたつ目の「くり返し」のバリエーションともいえます。
オウム返しばっかりだと芸がないし、話している相手も「この人オウム返しばっかりだな、ちゃんと聞いてくれてんのかな?」という不安にもなりかねません。
といいつつ、相づちとくり返しだけでもかなり話しを引きだすことはできるんですけどね。
なんですが、さらにこの「言いかえ」ができるようになればコワイものなし、です。
裏を返すと身につけるのはそれだけ手強い、ともいえます。
なぜそんなに手強いか、というと「これやっとけばOK」みたいな正解がないからなんです。
ちょっとまた例で見てみましょう。
《例》
相手:最近仕事がつまらなくてねー。
あなた:○○○○○〇〇〇〇
さて、例、といいましたが、あなただったらなんと返します?
ちょっと考えてみてください。
考えるにあたってひとつだけ条件があります。
それは、質問はNGです。
「忙しいの?」とか「疲れてるんじゃないの?」とかです。
では、考えてみてください。
・
・
・
・
・
・
・
・
さぁ、どうでしょう?
といっても、もちろんあなたの声は聞こえないのでいくつか考えてみました。
自分で考えたのと比べてどうですか?
《例》
相手:最近仕事がつまらなくてねー。
あなた:
- モチベーションが下がってるんだね。
- 仕事に身が入らないんだね。
- 会社にいきたくないんだね。
- 仕事が楽しくないんですね。
- 仕事が楽しくなくなってきたんだね。
- 忙しいんだね。
- 休みたいんだね。
- 転職したいんだね。
ご覧になってみてどうでしょうか。
あなたと話し相手の関係性にもよってくるのでこれが正解でこれが不正解、というのは厳密にはありません。
ただ私の感覚だと、下の3つ「忙しい」「休みたい」「転職したい」はやりすぎかもなぁ、と感じます。
やりすぎというのはどういうことかというと、話す側からしたら、
「いやぜんぜん違うし、わかってくれてないわ」
と気持ちが離れる原因になりかねない、ということです。
ただこれも、初対面の相手で最初の会話、例えばキャリアコンサルタントとしてクライアントの方と話し出して間もないタイミング、とかだとやりすぎじゃないかな、という程度の感覚です。
あなたと話し相手がお友達だったり、仕事の状況やそういうことを言い出す背景までつかんでいる同僚だったりということであれば、転職とか休み、なんていう流れでもおかしくないのかもしれません。
また仮に初対面であっても、しばらく話したあと、という文脈であれば当然ありえる会話かもしれませんので一概にはいい切れませんね。
ここまで話してきておわかりになりましたでしょうか。
そうなんです、先ほども述べたとおり「言いかえ」には正解がないんです。
なのでお伝えできることはこの一点。
相手の話しを真剣に聴いて、感じたことを返す
先ほどの例に戻るなら、相手の口調、表情、しぐさ、全部をトータルで見たときに、あなたが「この人は仕事を辞める決心をしてるようにしか見えない」と思ったら、思い切って返してみてください。
お仕事つらくて辞めてしまいたいって感じなんですね
と。
ひょっとすると向こうはびっくりするかもしれません。
どうなるかはわかりませんが、もしかすると図星をつかれて、
「いやー、ホントそうなんですよ。ただ自分がなまけてるだけなんじゃないかと…」
なんて話し出したりするかもしれません。
反対に、
「いや、別にそこまで大げさなことじゃないんです」
と軽くいなされるかもしれません。
私はそれでもいいと思っています。
そうなったとしても、たいていの場合は、
「いや、別にそこまで大げさなことじゃないんです。でも辞めるまではいかないにしても、この状態が続くと…」
とかって話しが発展していくことが多いです。
あらためて大切なのは、
相手の話しを真剣に聴いて、感じたことを返す
ことができているかどうか、です。
相手の話しもろくに聞かず、自分が持っていきたい方向にコントロールしたいとか、ちょっと違った角度でビックリさせてすごいと思わせようとか、そういう自分本位な考え方ではありませんので、この点はしっかりと心に留めておいてください。
ぜひ「言いかえ」もチャレンジして、傾聴マスターを目指してください!
以上が傾聴の3つのスキル「相づち」「くり返し」「言いかえ」です。
3つのスキル以上に大事なプラスα
さてここまで傾聴の3つのスキルについてお伝えしてきましたが、これらのスキルもその効果をちゃんと発揮させるためには大事なポイントがあります。
態度・しぐさ
先ほどまで紹介してきた傾聴の3つのスキルは、主に言葉を使う上でのスキルでした。
このような言葉を使ったコミュニケーションをバーバル(言語的)コミュニケーションというのに対し、これからご紹介する言葉以外の態度やしぐさなどでの情報のやりとりをノンバーバル・コミュニケーションと呼びます。
言葉を覚える必要はありませんが、言葉以上に態度やしぐさはコミュニケーションするにあたっては影響力を持ちます。
「目は口ほどに物を言う」ということわざはお聞きになったことがあるんじゃないでしょうか。
まさにあれです。
(目)は口ほどに物を言う《句》目つきも、ことば同様に感情を伝える。
出典:学研現代新国語辞典 改訂第六版
実際には目つきだけではなくて、あなたのすべて、一挙手一投足がものをいいます。
代表的なものを簡単に3つだけご紹介しておきます。
アイコンタクト
「目は口ほどに物を言う」のとおり、目、ですね。
日本人同士の場合は、じっと目を見つめるのは良くないといわれたりもします。
細かい話しはここではしませんが、ずっと目を伏せたままで相手の顔を見ないとか、ぜんぜん目が合わないとか、目が泳ぐとか、そういうのは気になりますよね。
あなたの周りの人を思い浮かべてみるとどうでしょう?
あの人は目を合わせてくれないなぁとか、よく目が泳ぐ人だなぁとかいませんでしょうか。
そういう人ってどんなふうに感じますか?
まず自分で意識してみていただきたいのですが、本当は話し相手からフィードバックしてもらわないとなかなか気づきづらいですね。
表情
続いて表情です。
ふだん自分がどんな表情で人の話しを聞いているか、ちゃんとつかめてますか?
口角が下がってへの字口になっていたり、しかめっ面で怒ったような表情になっていたり、下から見上げるような表情になっていたり…
それとか相手が深刻な悩みを相談しているのに満面の笑みでうれしそうな表情で聞いていたり…
少し口角を上げ気味で微笑みをたたえるように、というのが原則だというのは聞いたことあるかもしれません。
ただそれも作り笑顔がお面をかぶせたように変化がないのでは逆効果ですよね。
表情って自分ではすごくつかみづらいです。
なんですが相手がいちばんよく見ているところなので要注意ですね。
意識できてるときはいいんですが、無意識で話しを聞いているときにどんな表情になっているか、をつかんでおくことも大事です。
といいつつこれは非常に難しい。
できれば正直に率直にフィードバックしてくれる相手がいると望ましいです。
あとはここ最近の状況でリモートワークが多いのであれば、PCやスマホに映った自分の顔をチェックするというのがすごく有効です。
何気なく話しを聞いているときにどんな表情をしているか、チェックしてみてください。
姿勢
最後は姿勢です。
最近はリモートワークが多かったり、直接会っていてもソーシャルディスタンスで距離を取らないといけなかったり、という難しい面もありますね。
それでもやはり話しを聞く姿勢というのは大きな影響を与えると感じます。
大原則は、手を止めて相手に身体を向けてしっかりと聴く、です。
実際に話しているときにこんなことはありませんか?
- 自分はPCに向かってキーボード打ちながら話しを聞いている。顔も向けてない。
- PCに向かっていて、顔だけ向ける。
- スマホ見ながら話しを聞いてる。
- メモ取りながら聞いている。けど一切顔はあげない。
- 部下・後輩を立たせて、あなたは下から見上げている。
- 部下・後輩が座っている横から、見下ろすように立っている。
どうでしょうか。思い当たることありません?
それからまた最近のリモートを想定した場合での注意をいくつか。
- 資料を見ながら話すと顔が横を向いちゃう
- 顔が逆光で真っ暗
- 顔が映ってない、中途半端に見切れてる
- カメラが上から見下ろすような位置関係になっている
- こんなふうになっていると、やっぱり話しを聞かれてるほうは気になりますね。
それともう一点、これはぜひ注意していただきたいのですが、
- 見えないからと思って内職しない
これ大事です。
バレてないと思ってても、聞き方で注意力が落ちるとバレます。
それとかメガネかけてると写り込んでバレたりするので気をつけましょう(笑)
リモートの環境は簡単に整えられるのですぐに改善しましょう。
下記の記事も参考にしてください。
「これは便利!」リモートワークを楽しむおすすめアイテム厳選2点
まとめ:3つのスキルを使いこなそう
スキルは一日にしてならず
ここまで傾聴の3つのスキルと、プラスαとしてスキル以上に大切な「態度、しぐさ」について説明してきました。
本記事のはじめのほうでもお伝えしましたが、スキルというのは「知ってる」「理解してる」だけではダメで、「身について使えるようになってないと意味がない」ということです。
ですので習得のためにはトレーニングが必要です。
ぜひ今日紹介したスキルを実際に試してみて、傾聴マスターを目指しましょう!
本記事を書くにあたって参考にした書籍をいくつかご紹介しておきますので、興味があればぜひチェックしてみてください。
本記事で直接引用はしませんでしたが、以下の本も非常に参考になります。